しかしこの朝乃山という青年、実はとんでもない強運の持ち主なのである。
近畿大学時代、後の朝乃山である石橋は、個人タイトルを7つ獲得した。しかし、3年生までは主要な大会のタイトルは無かった。
ところが、4年生で国体成年の部4位、全日本相撲選手権大会ベスト4の実績を残したことで、2015年5月に創設されたばかりの三段目付出資格を取得した。
石橋の三段目付出入門は2016年1月28日に日本相撲協会の理事会で承認され、同制度の適用第1号となった。これは幸運である。何故なら、もしこの制度がなかったら、石橋は前相撲から相撲を取らなければならなかったからである。前相撲からのスタートと三段目からのスタートでは全然違うのだ。
その3場所後の秋場所では新入幕を果たす。
しかし時代が平成から令和に変わるとまるで別人になったかのように強くなったのである。
令和初の本場所となった2019年夏場所。幸運な出来事が起こった。当時優勝争いをしていた栃ノ心との戦いで誤審により勝利したのである。ちなみにこの場所では横綱鶴竜も優勝争いしていたが、鶴竜戦は組まれなかった。
結果的に12勝3敗で平幕優勝を果たした。朝乃山が12勝以上した場所は2回あるが、そのうち1回は優勝なのである。何と幸運なのだろうか。ちなみに13勝以上は経験はない。
しかも彼は令和初の優勝力士となったのである。
もうその時点で幸運なのだが、この場所では米国のトランプ大統領が千秋楽に大相撲を観戦したことにより、朝乃山はトランプ大統領から直接アメリカ合衆国大統領杯を受け取った。これはただの幸運では片付けられない。朝乃山にとっては一生忘れられない出来事だっただろう。
朝乃山にとって飛躍の年となった2019年の成績は55勝35敗であった。この年は横綱や当時の大関が休場や不振が目立ったことによって勝ち星が伸びず、その結果幸運なことに当時まだ小結であった朝乃山が史上最少勝利数で年間最多勝を獲得した。また、1年間小結以下の地位での年間最多勝は史上初であった。
この大関に挑戦していた3場所中にも幸運があった。
2人とももし戦っていたら苦戦を強いられていたであろう相手だっただけにこの不戦勝2つはかなり大きかった。
以上である。
一体どれだけの数の幸運があったことだろうか。羨ましいくらいの運の良さを彼は持っている。
しかし彼はまだ27歳。これまで幸運によって数々の成功や幸せを掴んできたが、それはあくまで現時点での話である。将来的には運なんかに頼らなくても絶対的な実力でスターになれる可能性を秘めている力士である。是非絶対的な実力で私を黙らせてほしいものだ。
これからの活躍が楽しみにしている。